この題名でピンと来た方は、余程の食通か仏文学に通じているに違いありません。
間違いない!!
実は、小生が起こした会社の名称は「合資会社ガストロノミー」といい、これを横文字表記すると
<GASTONOMIE>
です。尤も、これは仏語の綴りで、英語なら”GASTRONOMY”です。
この名称の語源が、本日の題名にある<美味礼賛>と関係があるのです。この美味礼賛は、18世紀後半から19世紀初頭まで生きていたフランスの食通として有名なブリア・サヴァランという人が1825年に書いた書物の題名なのです。その題名は
原表題:PHYSIOLOGIE DU GOUT
(味覚の生理学)
副題 :MEDITATIONS DE GASTRONOMIE TRASCENDANTE
(超絶的美味学の瞑想)
というものです。小生の会社は、この副題の部分から社名を取ったのです。美味探求し、食による感動をご提供する、という会社の願いをこめた命名であったわけです。すなわち、小生が売るものは食材ではなく、感動であるわけだ…。何が何でも売って見せるぞォ、と意欲に満ちた船出でした。
起業する前に所属していた会社は、世間的に見れば当時は一部上場の一流会社であり、思う存分やってきましたが、少し満足感が薄いのです。会社生活で得る満足感というのは、ある人にとっては地位であり、またある人にとっては金銭的、物的な充足感かもしれません。小生は、人々の、我々と同じ一般大衆が喜び、感動を覚える様な仕事がやりたかった、それが退職のトリガーになったと思っています。そして、始める事になった事業は、食材輸入~卸ですが、これはある意味、人々の喜怒哀楽と背中合わせの商売です。レストランの扉を開けると、そこには幸せな表情をして食事をし、その味わいに感動し、満足している姿がいつでも見られます。そんなレストランは限られますがね。
意欲満々で登記したあと、見回してみると同じ表記が、汐留あたりのホテルの中に入っているレストランの店名の中に入っていたり、トロワグロの出している食通誌の誌名に入っていたりで、結構、「食」を扱う業界では時々使われていることがわかりました。でも、小生の会社が属している法務局の管轄下には、同じ名称が無かったので、まぁ良しとしましょう。
先の美味礼賛は、ブリア・サヴァランがその学殖薀蓄を傾けて、人間の幸福のために厨房の芸術について語ったものなのですが、実に興味深い発言を多々残しておられます。話は少しそれますが海老沢泰久さんがお書きになった辻静雄さんの半生を描いた伝記も「美味礼賛」という題名ですが、この書き込みにでて来るのはブリア・サヴァランのものです。
先日、ブックオフで白水社から刊行された立派な本を見つけました。その内容に関しては、また後日別稿でとしましょう。
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