城北の雑記林 by 彰篠宮

ある老舗古書店の廃業。紙の書籍だけのショーバイは厳しいのか…という話。

こんばんは
管理人の彰篠宮です。

今回は、この十数年、足繁く訪れていたブックオフのフランチャイジー店が閉店することが判ったので、あれこれ思ったことを記事にします。

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ある古書店の廃業

23区内にあるブックオフのその店舗は、品揃えに特色があり、居心地がよい店だったので小生も良く訪れていました。

 

ところが、先月(2023年02月)末頃に、レジに

3月6日で買取中断

という張り紙があるではありませんか。

 

顔見知りの店員に張り紙の経緯を尋ねると、曰く

「3月末で店をたたむことにしました。この店舗は4月から直営店に変わります。」

あらま…なんということでしょう…

 

複数ある系列店のうち1店舗を残して3月末日をもって直営店に移行し、残る1店舗も4月末で閉店させる。手持ち在庫をできる限り売り切るべく3~4月はセールを行う、とのこと。

 

そぉか…ブックオフの本部は書籍を買い取ってくれないのか…冷てぇなぁ。

 

閉店する店、小生にとってはは良い店だったのですが、ここ数年、夜8時以降のお客さんが少ないな…とは感じていました。

 

さらに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの蔓延で、閉店時間が早くなり、また店舗内の立ち読みが制限されたためか?一段と来客が落ち込んでいました。

 

その背景には、

といったものがあると思われます。

 

前者は、2020年3月に緊急事態宣言が発出されてから弊社のネット売上が30%以上増加していたので、国民の消費行動として一般的だったと思われます。

後者については、市場のデータを見てみましょう。

 

出版市場の統計を見てその衰退ぶりにビックリ!

出版業界の調査研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所が発表しているデータです。

<出版市場の推移>


(印刷業界ニュース NEWPRINETから引用)

2023/01に『出版月報』で発表された2022年(1~12月)の出版市場の統計では。

2022年の出版市場(推定販売金額)は、対前年比 2.6%減の1兆6,305億円と4年ぶりのマイナス成長でした。その内訳は、紙の市場が同6.5%減とマイナス成長、一方電子出版が同7.5%増でした。

 

電子出版の、市場全体における占有率は30.7%で、前年の27.8%から2.9%上昇して金額ベースで初めて30%を突破しました。ただ、その電子出版もここ数年続いていた対前年20%前後の伸びが7.5%増と成長が鈍化しています。

 

出版科学研究所の分析では

22年は、20年、21年と出版市場を支えてきたコロナ特需が完全に終息するとともに、物価高も、趣味・娯楽品のひとつである出版物に影響し買い控えが発生した。

とみています。

出版科学研究所 出版市場は2.6%減で4年ぶりのマイナス成長、紙は6.5%減、電子は7.5%増~コロナ特需が終息

 

 

上のグラフではほぼ横ばいの出版市場ですが、長い期間を眺めてみると、とんでもなく縮小しています。出版業界の売上のピークは1996年だったのですが、その当時と近年の市場規模を見てみましょう。

出版市場規模

1996年 2021年 変動率
書籍 10,931 6,804 (▲37.7%)
雑誌 15,633 5,276 (▲66.2%)
電子出版 4,662
合計 26,564 16,742 (▲36.9%)

 

電子出版のデータは2014年以降分しか確認できませんでした。この表を見てわかるように、出版市場そのものは大変な縮小傾向の真っ只中にあり、電子出版を除くと1996年に対する変動率は▲54.5%とすでに半減以下です。

1996年といえば、懐かしいWindows95が発売された翌年で、PCが一般家庭にもどんどん入ってきた時期でした。その翌年1997年には消費税率がそれまでの3%から5%に変更(増税)されています。

 

こうした状況をみると、出版業界をとりまく環境はとても厳しいことがわかります。

 

電子出版のほぼ9割はコミック!

縮小する出版市場を支える電子出版市場のデータを見るとビックリです。上記した電子出版市場4,662億円(2021年)の内訳は以下の通りです。

電子コミック:4,114億円(前年比+20.3%)
電子書籍  :449億円(前年比+12.0%)
電子雑誌  :99億円(前年比▲10.0%)
————–
合計    :4,662億円(前年比+18.6%)

 

電子出版市場全体では対前年比+18.6%と大きく伸びており、これは「鬼滅の刃」の大ヒットに始まり、「呪術廻戦」「東京卍リベンジャーズ」などの映像化作品が次々にヒットしている作品に由来する要因に加え、コロナ禍の「巣ごもり需要」でユーザーが増加し、客単価も上昇したことが要因だと考えられています。

 

電子書籍でコミックで読む人が多いという情報は知っていましたが、電子出版市場におけるコミックの割合はなんと88.2%を占めており、電子書籍のユーザーの9割近くがコミックを読むために利用していることがわかりました。

 

コミック市場のデータを見てまたまたビックリ!

出版業界の調査研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所によるコミック市場の販売データです。

紙と電子を合わせたコミック市場規模(コミックス+コミック誌+電子コミック)は前年比10.3%増の6,759億円と、1978年の統計開始以来過去最大の市場規模となりました。

この市場規模拡大は、上記した電子出版市場の好調を反映したものです。紙のコミックスは「呪術廻戦」「東京卍リベンジャーズ」をはじめとする映像化作品のヒットで前年並みの市場規模を維持しています。その一方で、コミック誌は読者離れに歯止めが掛からず、25年連続でマイナスが続いているそうです。

コミック市場における紙と電子との比率は、2019年にすでに電子の方が金額ベースで上回っておりますが、2021年にはその差がさらに広がり、電子コミックの市場は紙の1.97倍とほぼ2倍にまで大きくなりました。

電子書籍でコミックを読む人が多いだけでなく、コミックは電子書籍で読む人のほうが遥かに大きくなっている事を知り、小生はまたまたビックリでした。

 

雑誌市場は可哀想なくらいの低落傾向

巷のニュースでも、「〇〇誌」が休刊とか廃刊という話をよく耳にしますが、データの上でもその状況が感じられます。

 

月刊誌・週刊誌ともに1997年をピークに、24年連続でマイナスです。週刊誌は1995年のピーク時(4,075億円)にくらべてほぼ1/5の825億円、月刊誌も1997年のピーク時(8,295億円)にくらべて1/4の2,065億円。休刊点数が創刊点数を上回り、発刊点数は15年連続で減少。

 

ムックも97年をピーク(1,355億円)に減少基調で、2021年は半減以下の537億円。新刊点数も13年(9,472点)をピークに抑制傾向が続き、21年は6千点ほど。

 

ブックオフのような古書店が生き残るには多角化が必要なのかも

紙の書籍、雑誌、コミックの売上がこの四半世紀で半減している一方で、電子書籍が着実に売上を伸ばしている現状では、品揃えに特色を出してはいるものの書籍にこだわった販売形態では厳しいのが現実なのかもしれません。

 

その打開策のひとつが、ブックオフの直営店で広がっているトレカの販売であり、家電製品の販売なのかもしれません。

 

今回の都内の某ブックオフの閉店にともない、小生も古書店との関係が少し薄くなりそうな気がします。

 

いかがでしたか

今回は「ある老舗古書店の廃業。紙の書籍だけのショーバイは厳しいのか…という話。」と題して、この十数年、足繁く訪れていたブックオフのフランチャイジー店が閉店することが判ったので、あれこれ思ったことを記事にしました。

紙媒体による情報伝達というものが中心であった時代が過ぎ去りつつあるのを痛烈に感じました。

ではまた。

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