こんばんは
管理人の彰篠宮です。
今回は、五輪組織委員会が『看護師「5日以上を500人」』を要請していたことがスクープされた後に起こった様々な事を振り返り、それについてあれこれ書きたいと思います。
それは赤旗のスクープから始まった
4月25日のしんぶん赤旗に『看護師「5日以上を500人」 五輪組織委が看護協会に要請』という記事が掲載されました。この要請は、東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に対して発行した4月9日付のものです。
その文書には
「新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に伴い、看護職の確保が不十分な状況に至っております」
「看護協会への依頼人員:500人」
「活動場所(予定):競技会場、選手村総合診療所(発熱外来含む)、選手村分村、宿泊療養施設等」
「参加日数は原則5日以上(連続でなくても構わない)。」
「1シフトあたり9時間程度(早朝、深夜含)」
「大会前の5~7月に実施予定の役割別研修への参加必須。」
以上6項目<しんぶん赤旗記事より>
看護師「5日以上を500人」 五輪組織委が看護協会に要請(4月25日赤旗)
UPDATE 1-東京五輪に看護師500人動員、組織委が検討を要請(4月26日ロイター)
この記事は、他の新聞社に先駆けてしんぶん赤旗がスクープしたもので、これ以降、大手新聞社の紙面にも出るようになっています。
4月9日は、新型コロナウイルス感染症の新規陽性者が、大阪で900人を超え、東京でもジリジリと増加しつつあり、医療体制に逼迫が叫ばれている時でした。よくもまぁ、そんな時にヌケヌケと「看護師を500人」差し出すように…と要求できたものだと呆れるばかりです。
ところが、この記事はその後の激震の前触れでしかありませんでした。
組織委員会会見「医療体制の逼迫は承知」
4月25日のしんぶん赤旗の報道を受けて、翌4月26日には東京五輪・パラリンピック組織委員会が火消しに乗り出しました。
「約500人の看護師の方々について、検討していただけないかというお願いをいたしました。大前提は地域医療に悪影響を与えないようにすること。そのために、勤務時間やシフトのあり方をよく相談しながら、最も対応可能なやり方を相談していきたいと思っております」
「こういう話は、前広に(前もって)相談しないと、直前になっても対応できないということになる。最終的には、観客上限(の結論)による。その前に、対応いただく時間があるように、この段階で相談した」
「医療体制の逼迫(ひっぱく)は十分に承知している。ただ、大会開催に当たってはコロナと関係なく、常に医療体制を考えなければいけない。暑さ対策への整備も必要になる。一方で、地域医療への悪影響を避けなければいけない。先ほども申し上げたが、シフトや勤務時間の相談をさせていただき、対応したい」
以上3項目<日刊スポーツ記事より>
「医療スタッフを派遣しやすくなるよう、国や都に経済的な支援を検討していただいている。医療関係者に真摯(しんし)に向き合って、地域の医療に影響のないよう体制準備に努めていきたい」
「現下の状況を踏まえ、医師や看護師に円滑に参加していただけるよう日数やシフトなど体制を工夫していきたい」
以上2項目<時事通信記事より>
東京五輪期間中に看護師500人確保へ「医療体制の逼迫は承知」組織委員会((4月26日日刊スポーツ)
看護師500人の確保依頼 東京五輪パラ期間中に―大会組織委(4月26日時事通信)
この発言は五輪・パラリンピック東京大会組織委員会の武藤事務総長の会見で語られたものですが、何とも官僚的な答弁で全く心に響きません。そりゃそうでしょ…事務総長の武藤敏郎氏といえば、もとキャリア官僚で、しかも大蔵・財務事務次官、日本銀行副総裁などを歴任した「超」が付くエリート官僚でした。
そもそも、国内観客数をどの様に設定するのか、選手、大会関係者、スポンサー関係者、VIP客などどの程度の人数がオリンピックに関わるのかが全く明らかにされない状況で、取り敢えず「頭数(あたまかず)」だけは抑えておきたいとする魂胆がミエミエです。
さらにこの翌日に、またまた大きな燃料が投下されてしまいます。
東京五輪・選手などの入院先に指定病院約30か所確保へ
4月26日付しんぶん赤旗に、日本共産党の小池晃書記局長の談話が掲載されています。それによれば選手村診療所に「発熱外来」設置が予定されていることに触れ、
「コロナ治療の現場では看護師らが過酷な条件で働いている。ワクチン接種体制もままならない。こうした仕事と、五輪への500人もの動員が両立するとでもいうのか」
「選手村でコロナ感染者が出る事態まで想定するのであれば、五輪・パラリンピックは中止し、コロナ対策に医療支援や医療従事者の力を集中すべきだ。それが、アスリートや多くの国民も望んでいることではないのか」
以上2項目<しんぶん赤旗より>
と述べて、改めて東京五輪・パラリンピックは中止すべきだと主張しています。日本の政党で日本共産党が国会で早くから、2021年1月21日衆院本会議の代表質問で五輪・パラリンピック東京大会の中止を主張しているんですね。
ところが、その日の驚きのニュースはこちらです。TBSニュースでは
「東京オリンピック・パラリンピックの新型コロナ対応などを踏まえ、大会組織委員会がアスリートなどを受け入れる大会の指定病院を30か所程度確保する方向で調整を進めていることが判明。」
「アスリートなどの入院先となる大会の指定病院は大学病院や都立病院などで、大会組織委員会は都内に10か所程度、都外に20か所程度、確保する方向で調整を進めています。また、選手村には新型コロナに対応する発熱外来や検査ラボを設置し、大会期間中は24時間態勢で運営にあたることも新たに判明。」
以上2項目<TBSニュースより>
なんと、入院できずに自宅療養している方が大阪府だけで1万人を超えているのに、五輪最優先で国民の生命を蔑ろにする組織委員会の対応は言語道断と言わざるを得ません。
東京五輪・選手などの入院先に指定病院約30か所確保へ(4月27日TBSニュース)
看護師500人動員要請は選手村での感染想定 五輪中止しコロナに集中を(4月27日しんぶん赤旗)
これらの報道を受け、SNS上の動きを含め世間は俄にざわめき立って行ったのです。
医療現場サイドからの反発の声、大きなうねりが広がる
4月25日から始まる一連の報道により世間にも広く知られるようになったかも?と思われた組織委員会の暴挙ですが、それに反対する声が医療の現場からも悲痛な声が上がっていることが大きく知られる出来事がありました。
4月28日のスポーツ報知では、「五輪は中止にしてほしい」と口をそろえて述べる現場看護師の声としていくつか紹介しています。
「もともと、大前提として医師、看護師不足が大きな問題としてある中、さらにコロナで病床はひっ迫、経営は赤字の状態。非常に苦しい。これ以上、どこから500人も看護師を出す考えなのか分からない。病院ではコロナ対応に人員を割かれ、一般病棟も人手不足の中、懸命に働いている」
「感染者が少ない県から人員をかき集めれば500人は集まるでしょう。ただ、わざわざ感染しに行くような場所に行きたくないのが正直なところ。日頃、勤務先から『他県には行くな』と指示されているし…」
「選手が五輪に向けて頑張っている、この五輪が最後だという選手がいるのも分かっている。それよりも日本が、世界が大変なことになっている。ただでさえ、今は変異株で感染が急拡大している。五輪で別の、複数種類の変異株が広がり、五輪後は国内で(感染者が)さらに増えると思う」
以上3項目<スポーツ報知記事より>
そして、同日の午後2時から、本件に関し愛知県医労連などの関係団体が「#看護師の五輪派遣は困ります」のハッシュタグを付けたTwitterデモを始めました。このデモは5月1日現在で24万ツイートを超えているそうです。
しかも、この500人の看護師についての報酬は明らかにされておらず、医療ボランティアとして無償での対応では、とするネット上の情報も散見されます。これについては、
「大会期間中の医療スタッフを巡っては、組織委は競技会場や選手村などの医務室で医療従事者が計約1万人必要と想定している。当初は一部の役職を除いて無償で協力を要請する方針だったが、新型コロナの感染拡大で逼迫(ひっぱく)する医療現場や国民の理解を得るために方針を転換。報酬を支払う方向で検討している。」
<毎日新聞記事より>
という報道もあり、今後注意して見ておく必要があります。
「五輪中止してほしい」「正直行きたくない」看護師500人派遣巡る現場の声(4月28日スポーツ報知)
看護師500人要請に医労連らがツイッターデモ 「#看護師の五輪派遣は困ります」がトレンド入り(4月28日スポーツ報知)
東京五輪「看護師500人確保」の依頼にツイッターで抗議デモ 「命より優先することなのか」愛知県医労連(4月30日中京テレビニュース)
国民は五輪のいけにえか! 組織委「選手用病院確保」報道に怒りの声(4月28日日刊ゲンダイ)
五輪組織委、看護師500人の派遣を要請 日本看護協会に(4月26日毎日新聞)
#看護師の五輪派遣は困ります ツイート数24万超(5月1日しんぶん赤旗)
政府分科会の尾身会長 「五輪 議論始めるべき時期」(4月28日FNNニュース)
また、政府分科会の尾身会長は、この五輪に関する医療問題に関し、次の様に語り
「今の組織委員会など関係者が、感染のレベルや医療の逼迫(ひっぱく)の状況などをふまえて、オリパラにかかわる議論をしっかりとやるべき時期に、わたしは来たと思います」
<FNNニュースより>
東京大会の開催のあり方などについて、感染状況や医療の逼迫が、今後どうなるのかを考慮したうえで、対応を事前に決めるべく組織委員会など関係者が、議論を始めるべき時期に来ているとの考えを示しました。
こうした世論の動きに対して、菅首相がとんでもない談話を語ってくれました。
「看護師500人派遣要請」に対する首相談話
4月30日、菅首相が、五輪・パラリンピック東京大会組織委員会が日本看護協会に、大会の医療スタッフとして看護師約500人の確保を要請したことについて、なんと
「休んでいる方もたくさんいると聞いている。可能だと考えている」
医療関係者の反発があることについて
「そうした声があることは承知している。支障がないように全力を尽くしていきたい」
と語ったのです。当然、世間からは大きな反響があり、ヤフコメには5月2日現在で18,000件を超えるコメントが寄せられています。
また、日本看護協会の福井トシ子会長は4月30日、菅首相と会談を行い看護師の五輪への派遣要請に関して
「五輪をやるという事になっているのであれば、そこに向けて今出来る事をしっかり整えておく」
と述べるに留まっており、特に対応の可否については明確に語っておられません。
コロナ対応で医療現場が疲弊しており、ワクチン接種の加速のためにも更なる体制増強が望まれている現状を知りながら、菅首相の談話は国民に受け入れられるものとは到底思えません。看護師さんが一線を退いているのは、それぞれの理由があるワケで、あおうした事情に斟酌せず「休んでいるなら五輪を手伝え」とばかりの物言いに及ぶのは如何なものでしょうか。
菅首相 五輪・パラリンピックの看護師500人確保は可能「休んでいる人多い」
五輪・パラリンピック東京大会組織委員会や政府のここ数日の対応により、国民の五輪開催に対する反発は一段と高まったといっても差し支えないと思います。
如何でしたか?
今回は、五輪組織委員会が『看護師「5日以上を500人」』を要請したいたことがスクープされた後に起こった様々な事を振り返り、それについて「五輪組織委員会要請『看護師「無償で500人」』騒動を振り返る…という話」と第して記事を書きました。
政府・東京五輪組織委員会は、国民の命より五輪を優先させる方針を明示したといえましょう。断じて許されることではありません。